不倫こそ純愛などという

むしろそれを逆手にとって、主人公のロバートを、そうしたステータスとは無縁の、フリーランスのカメラマンといういかにも放浪者然とした設定にしたのが、多くの女性に支持された一因かもしれません。ただ、この小説がフィクションのフィクションたるゆえんだと思うのは、ロバートがフランチェスカのことを一生涯思いつづけていたということです。現実の男性が一人の女性をずっと思いつづけるというのはきわめて稀なことでしょう。そう考えれば、〃不倫こそが純愛″などという、最近の風潮は単なる幻想にすぎません。この場合、彼女とのことはとりあえずいい思い出としてとっておいて、別の女性を見つけるのがやはり自然でしょう。しかも、彼の性的能力は高く、性欲もけっして弱くはありません。別の女性が見つからないはずがないのに、あえて見つけようとしません。もし、あなたが恋愛向きなら、←ここで将来の結婚に向けて経験値を増やしましょう。自分の遺産管理を委託した法律事務所を通して、彼女に宛てた手紙の中で、「あなたの前には、ごくわずかですが、女性がいたのにあれ以来ひとりもいません。くつに意識的に独身を通そうと誓ったわけではなく、ただ興味が持てないのです」などと書いています。こうした彼の心理を分析してみると、おそらく彼はドン・ファン型のタイプの一変種かもしれません。ドン・ファンといえば好色放蕩(ほうとう) の架空の人物ですが、このタイプの男性は理想の女性を求めて次から次へと女性を渡り歩くのですが、結局はどの女性にも満足することができません。

DK047_L

Comments are closed.